1.読解力をつけるには…
お手元の封筒に入っている、方形の四角の枠が囲ってある資料を見てください。
昨日、佐野先生が講評のときに話をしていた、気温と降水量のグラフの件ですが、国立教育政策研究所が実施状況調査をやっている、あの調査では気温と降水量のグラフの読み取りが意外にできないことがわかった。
あの調査をやっているうちに、いろんなことがわかってきた。そのうちの代表的なものに、気温と降水量のグラフというのは何回も見ている。
日本でも世界でも小学校段階から見ているのに、この読み取りが意外にできない。
これはPISAの調査で読解力が問題になっていて、読解力が低下している。
読解力には、文章みたいなものを読み取っていく連続型の読解力と、写真とか図版などを読み取っていく非連続型の読解力の二つがある。社会科は主として非連続型の読解力。
これをどういうふうに高めていくかということがある。
読解力をやしなうというが、そもそも、昨日も言いましたが、読解力をちゃんとトレーニングするように授業で扱っているかというと、実はそれが問題です。何が問題かというと、キャプションが邪魔をしている。それで、だいたいは先生方の習慣が邪魔してしまう。慣れてしまうと、読まないで読んだ気になってしまう。
気温と降水量のグラフも実は読んでいるようで読んでいない。
それを体験させるためには、やっぱり一度書いてみること!これが一番いい。
2.地図帳の雨温図
それで今日は用意しました。先生方のなかにはやった経験があると思いますが、とりあえず、やってみましょう。
(配布プリントの③)
枠が下にあって、その上に1月から12月までのデータ(気温と降水量)が出ている。この表を使います。
一番分かりやすい図になるように、上のデータを使って、下の枠の中に書いてみてください。
目盛も何も打ってないので、目盛を工夫してください。
表は上が気温で、下が降水量です。データは1月から12月まであります。
とりあえずちょっと書いてみてください。
≪作業中(3分くらい)≫
澁澤先生:まわっていて、ダメ(気温と降水量が重なっているのが目立つため)。
えーと、何人かの人は気をつけて描いていますが、それ以外の人はほとんどがダメですね。何がダメかと言うと、目盛のとり方が基本的にダメ。何が基本的にダメかというと、要するに、気温と降水量の目盛を、下から上までめい一杯大きく取ろうとしている。だから、今のまま進めると、気温と降水量のグラフが完全に重なってしまう。
地図帳とか教科書に書いてある、気温と降水量の、あのグラフを思い出す。
降水量をある程度の高さまで描いてから、その上に気温のグラフがある。気温と降水量がかぶさらないようになる。これが基本ですよね。
気温の目盛をかなり上の方にとっていかないと、気温と降水量のグラフが重なってしまう。15きざみぐらいにとっていき、一番上限を30度ぐらいにしておく。そうしないと、気温と降水量のグラフが重なってしまう。
今日は枠をたくさん用意しましたので、別の枠をつかって、もう一度打ち直してみてください。
≪作業続行(さらに4分程度)≫
そこまでにしまして、意外に難しいのは、メモリは左右にとる。
昨日、佐野先生もおっしゃっていましたが、両側にメモリがついているグラフというのは数学で教えない。
数学というのは座標でどこを表すかを示す。
両側に目盛が書いてあるグラフは意外に使わないと言います。
小学校では気温は気温のグラフ、降水量は降水量のグラフで分けている。
それを一緒のグラフにしてしまうのは、中学校で教える。それで教えるときに、社会科の先生は慣れてしまっているから、ほとんどメモリを見ていない。
メモリを見ないから、こうやって分かりやすくグラフを描こうとするときにメモリを大きく取ってしまう。重なるように描いてしまう。
これはだいたい、日本海側はこういう形になるとか、太平洋側はこういう形になるというふうに、もう形を覚えているから、パターンがあまりにも普及しすぎてしまって、グラフを読み取らせないで、実は読み取った気でいて、形で読み取っている。
それは一つ一つの数値に注目していない。
そういう意味では一回描かせたい。描くと、意外なところで弱点が出てきてしまう。子どもは、気温の目盛はこの縦の線の上にとりたくなる。
降水量は、線と線の間に描きたくなる。何となくそういうふうになる。折れ線グラフの線は、何となく縦の線の上にとりたくなる。棒グラフは線と線の間に描きたくなる。そうすると、下に月のメモリを描くときにどうやってメモリを打つのか。意外と、子どもは自然に流れていく。
折れ線グラフのメモリを線と線の間に描かないと月がずれてしまう。それはやってみてわかる。そうすると、注意するとわかる。注意しないとやっぱりダメ。グラフの読み取りは基本がダメ。
それと今描いているグラフはどの辺だと思いますか。
ぴったりした数値が出てこないが、前の統計を使っているので、たぶん降水量の方から判断すると、1月、2月の気温と、降水量を考えると、降水量が少ないので、気温は東京より1、2度高い。瀬戸内ぐらい、高松とか。
数値に気をつけさせるには、地元のグラフを描き入れたい。
できるだけ、東京の人は東京の、長野の人は長野のグラフを描き入れる。
また、「数字に対してもう少しこだわる」ことを付け加えられた。
さらに、つづけて以下の例をあげた。
もう少し極端に比較するものを入れたほうがよい。
極端に比較するのを今から言います。
(温帯のグラフ 温帯の気候)
こんな温帯があるんだなあ、というのを経験させたい。温帯で、気温の格差が少ないところをあえて入れます。
数字を読みますので、メモリを打ち込んでください。
1月 9.8 2月 11.4
3月 12.3 4月 13.6
5月 15 6月 16.5
7月 17.3 8月 17.8
9月 18 10月 16.3
11月 12.8 12月 9.9
一番寒い月が先ほど書いた、高松の何月に当たりますか?
1~6月の間だとすると、一番寒い月がだいたい何月ごろ?
(会場から:3月)
3月ぐらい。
一番暑い月は?1月から6月の間で?
5月くらい。
今言った都市は、一年間の気温の変化は、3月から5月くらい。要するに3月から5月くらいの陽気で一年間が変化している。場所はどこだと思いますか。
サンフランシスコです。サンフランシスコとかウェリントンとか、海岸際の都市のなかには、こういう一年間で、日本でいえば春、そういう場所もある。
逆に言うと、季節風の吹く温帯は、夏は夏らしく冬は冬らしく、四季の変化がはっきりしている。そういう温帯がある。
一方で、暑くもなく寒くもなく一年中温暖であるという、一年が温和な気候、そういう温帯もある。
四季の変化がはっきりしていることと、一年中温和であることは、ある意味で矛盾している。
だけど、一年中温和なところの温帯のタイプと、四季の変化がはっきりしている温帯のタイプが基本的にあるということ。
そういうことも含めて、気温と降水量のメモリに少し注意する。そういう習慣をつけたい。
一番近い自分の地元のグラフを入れます。
夏は、高松の8月が27.1度に注目させた時に、どうやってこの数値を出しているのか。
今日も32度くらいになると言います。真夏日だと、けっこう30度を超える日がある。この数字自体は30度にとても及ばないものになっている。冬も氷が張ったりする日もある。
この気温はどうやって出しているのかを考える。
気温の出し方を…。
降水量は積算で常に分かってしまう。
降水量も一月ごとに出すのに、長野の例で、昨年はすごい雪が降ったので、今年はほとんど雪らしい雪は経験していない。そうすると降水量が変わってしまう。
ここに出てくる降水量はどうやって出しているのか。
気温の場合は、1ヶ月、7月1日から31日まで毎日測ってそれの平均を出す。
1日の平均気温はどうやって出すのか?
(7月31日の平均気温)
当然、今年の7月31日と、去年の7月31日では気温が違う。
そうやって考えてみると、ここに出てきている、気温と降水量のデータはどうやって出している数字なのか?
今日はすべて用意しました。
まず一番最初のページの裏側を見てください。
(上の段、左右に2005年8月10日1時間ごとの値、長野市)
そのとなりに2006年8月10日の気温と降水量を比べてみてください。
これ1日ですよ。
気温というのは、1時間ごとにとっていき、24回とって、それを平均するのが1日の平均気温。
1日の平均気温には最高、最低だとか、最高と最低を足して2で割るのではなく、1時間ごとに24回測ったものを24で割る。
降水量は足すだけ。
8月10日を見ると、降水量は2005年のときは雨が降っている。降水量が記録されている。そのことは気温にも表れている。
夜中の1時からけっこうな気温だけど、昼間はそれほど上がっていない。これは曇っているから。雨が降っているから。
それに対して(2006年の)8月10日のときは降水量0、晴れている。晴れているのは気温にも出ていて、昼間も30度越えている。
要するに、1日の平均気温は24回測って足すことが分かる。
気温の場合は、1ヶ月測って毎日計ってその平均を出す。
(①の表のページを見て)
(2006年2月の1日ごとの気温と降水量)
2007年2月、同じ2月でも1年違うと、こうやってデータが違う。
2月の平均気温を出すときは、気温は28日全部足して割る。
降水量は積算なので、28日分すべて足す。
2006年と2007年ではけっこう降水量が違う。
それはどうやって計算するのか、そういうデータです。
(②の裏)
真冬が2月だとすると、真夏は8月、2006年8月と2005年8月の日ごとのデータがあります。1日ごとのデータ。
1年ごとにかなり違うとなると…。
※これ以降は、内容の概略をかいつまんで記述します。
(②の表)
長野の例
統計期間
(1971年~2000年までの30年間の平均)
今、普通に使っている気温と降水量のデータはこの数値です。
30年間にどうやって変化しているのか。
(②の表の下)
(年平均の気温と降水量)
(2005年の月ごとの平均の気温と降水量)
このデータを上手に使って、読解力を高める指導法を…。
気温と降水量のグラフに慣れ親しむ。
データは、気象庁のホームページで、気象統計情報をクリックします。最新の気象のデータとか、過去のデータとか過去の気象データをクリック。
左から順に、地域の選択。県をクリックすると、どこの観測所かが出てくるので、自分の一番近い都市の観測所をクリック。
データの種類を選択。
東京都でもたぶん10ヶ所ぐらい。
長野でも広い所で30ヶ所。
基本的にはデータはすべてそろっている。
そういう調べ方も子どもに体験させることができる。
(3~4人のグループになって)
授業の進め方について話し合う。
【グループ分け】《2分》
生徒にすべてデータを渡してしまってよいのか、などぜひ話し合ってみてください。
《22分》
話し合った結果について、答えを出し合った。
・アイデアを出し合うことは重要。
・両側にメモリがあるグラフを読み取ることは中学生にとって初めてのこと。
・教える先生から見れば…。
・いつのタイミングで出したらよいのか。
・数値に対する関心
3.読解力を高める指導の工夫とは…
次の作業に移ります。
≪作業≫
23区の人口推移の統計から、増減をみる。白地図を使用する。
5年ごとの国勢調査なので、前後を単純に比べて増減をみていく。色は2色使い、白地図は8つ分あり、統計は10通りあるので、参加者それぞれでどの時期をとったかは様々。
都区部の昭和25年からの人口の変化を表した表で、5年ごとに、昭和30年まで。
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