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楽しい授業をつくるためのスキルアップ講座

「地域の規模に応じた調査の評価」


1.指導のトレーニング

 今日は「地域の規模に応じた調査」のところの、指導と評価の一体化から、指導のトレーニングをしてから評価の問題を作りたいと思います。

 まずお手元の資料で、東京都を対象にしながら、どう指導するかということから検討していきたいと思います。ここに東京都がどんな特色になっているかという統計から、グラフ、ウォーターフロントの地形図、東京都を学習するために開発された教材があります。この資料を見ながら東京都の地域的特色を明らかにしていく学習を一つの事例、数学でいう例題にして、具体的に都道府県規模の地域の特色の追求のしかた、視点と方法を学ぴ、解き方をマスターして、練習間題に取り組むための学習にしていくことが目的です。

 多くの場合、こういうデータを見て、「何か疑間に恩ったことはないか、その疑問を手がかりに調べていきましょう」と、まず自分で課題を見いだすという作業から調べ学習をさせていると思いますので、その作業から始めます。6人ぐらいずつグループを作ってくだざい。B5の用紙を横長に使って、半分に折り、こちらの方に子どもが思いつくであろう課題を、できるだけたくさん出していただきましょう。一つ一つの課題を書くときに、少し空白を空けてください。

(約25分ほど作業の時間)

 それでは、そこまでで作業は止めていただいて、作業のようすを見ている限りでは、どうも先生方は性根がまじめすぎますね。(笑い)たぶん、社会科の先生として立派な課題を作ってやろうという気持ちが強すぎる。子どもだったらこういう疑間を持つだろうという前提でやれば、たくさん挙がってくるかなと思ったんですけれども、思ったほどたくさん挙がっていないようです。

 この学習自体は東京都の地域的特色を明らかにするのが目標ですので、挙げたものが東京都の特色が明らかになるような課題かどうかというのが、最大のポイントです。たとえば長野県はミカン以外の果物がほとんどできる果樹王国なんですけれども、リンゴは全国の4分の1くらい生産している。そうすると子どもたちが出すのは、たとえば「リンゴにはどんな種類があるんだろうか」という課題です。だけどリンゴにどういう種類があるか分かるということと、長野県の特色が明らかになることとはイコールではないんです。この課題を追求すれば東京都の特色に結ぴつくのか、それともこの課題は、データから疑間としては出せても、必ずしも東京都の特色には結ぴつかないのか。そう考えたときに、結ぴつかないからだめだね、というふうに捨てるは、これもまたもったいない。たとえばりンゴにはどんな種類があるかという疑問が、そこで止まっちやうと、長野県の特色にも何にもならない。だけど、いろいろな種類のリンゴが分かって、そのうち長野県はどんな種類のものを多く栽培しているのか、ざらにその種類を多く栽培しているのは、いったいどういう事情によるのか、というところを少しつっこむと、長野県の特色になってくる。そこで、いま半分のぺ一ジに書いていただいているわけですけれども、それをこのまま東京都の特色に結ぴつく課題としで十分機能するものと、機能しない場合には、そこをどう作り替えると地域的特色に結ぴつく課題になっていくかということを白紙の方のところヘ、できるだけ子どもたちが考えた課題や疑問を、東京都の特色に結ぴつくように修正して書いていただけますか。

(約10分ほど作業の時間)

 全体の時間が限られているものですから、急がせて申し訳ないんですけれども、てきぱきとやってください。(笑い)それでは、東京都の地域的特色に結ぴつく課題ができたと思いますが、その課題について子どもはどんな仮説・予想を立てるでしょうか。たぶん結果はこうなるだろうという仮説・予想が立ったらば、じやあそれを明らかにするためにはどうしたらいいかという方法的な部分を、それぞれの課題について、次の余白のところに、別の色で書き加えていただけますか。

(約10分ほど作業の時間)

 たとえば長野県でやったときに、「長野県で精密機械工業がさかんなのはなぜか」という課題を出した子どもたちの中に、「長野県には手先の器用に人がたくさんいる」という仮説を立てた子どもがいました。手先の器用な人がたくさんいるというのは、仮説としては成り立つのは成り立つかもしれない。だけど、どうやって調べるか。現実問題として、すごく難しい部分があるんです。

 いま、東京都の地域的特色に結ぴつくかどうか、また結ぴつくように課題を作り直し、そして仮説を立てて、方法を考えました。方法を検討すると、具体的に非常に難しい、子どもの手に余るものと、可能なものがあると思います。その辺をチェックして、その上で改めて東京都の特色を明らかにしたい。しかも視点や観点を検討するだけじやなくて、東京都の特色を地誌的に明らかにしたい。それにはですね、昨日もふれましたが、(3)の「世界と比べてみた日本」のところの、アからオまでの項目が、日本という国を地域としてみたときの窓方式の窓なんです。自然環境と人口と資源や産業、それと生活文化と地域からの結ぴつきという5つが、世界と比べて日本をとらえるときの窓になっているわけです。東京都を見る場合も、静態地誌的にアプローチしたとき、この窓はかなり有効なのだろう。そこで東京都の特色をとらえるには、この5つのアプローチをする必要があるんだと考えたときに、残った課題をこのフィルターにかけてみると、子どもたちが立てた課題で十分なのか、不十分なのか。不十分だとすれば、どんな課題を補充しなくちやいけないのかという、この検討をやってください。

(約7分ほど検討の時間)

2.学習場面の意識化

 だいぶ混乱したり、何やっているか分からなくなったりしていると思うんですけれども(笑い)、もう一度そこで整理をします。いったい何を調べると、学ぴ方を学べるのか。都道府県の調べ方、視点や方法を、解き方として身につけるためには、どういう学習をしなくちやいけないのか。基本は、視点や方法を検討する場面を、学習場面として作ることなんです。

 今順を追って考えているのは、一つはデータを出して何でもいいから調べなさいというと、子どもは思い思いの課題を出してくる。でもその作った課題が、必ずしも地域的特色に結ぴつかないものがたくさんあるんじやないか。その検討がまず必要だということです。それと、課題としては作れても、実際には調べようがないものが結構たくさん出てくるおそれがある。子どもたちに最初から挫折感を味わわせると、やる気がなくなっちやうんですよね。やっぱり展望が立つようにしたい。そのためには仮説を立てながらも、一方で方法をしっかり検討して、そしてものになる課題かどうかを見極めたい。その上で、子どもたちが作っただけでいいのかということを考えなくちやいけない。つまり東京都という一つの県の特色を明らかにするためには、静態的な地誌であろうと動態的な地誌であろうと、ある程度多面的に見ていく必要があるだろう。そのためには、地域をとらえる5つの視点として、子どもたちが作った課題が、そのどれに属し、またどの視点が欠けているのかという、そこのところをはっきりさせたい。その検討をする中で、都道府県の特色を明らかにする時には、こんな面や、こんな面からとらえていくといいんだねということを議論しながら、子どもたちにきちんと、ある意味で気づかせるようにしていきたい。課題の過不足を検討し、補充をし、どこのグループが、あるいは誰が、どの課題を担当するのか。それをみんなで共有化すると、東京都の特色が明らかになるというところに結びつけていきたい。

 実は最初にお渡した資料の中に、東京都の特色を、他の都道府県と比較しながら明らかにできるようなデータと、東京の都内の地域差をふまえた東京都の特色にアプローチするようなデータの2つがあるんです。これを全域と基域というんですけれども、東京都を全域としたときには各区部とか市町村が基域になり、日本を全域として設定したときには47都道府県を基域としてあつかうということです。基域としての東京都といった場合には、47都道府県と比較しますから、東京都内の地域差は考えないで、一つの地域としてとらえた東京都は、どんな特色を持っているかということを5つの視点から見る。一方で東京を全域として設定すれば、その中はいろんな基域から構成されているというように考えていく中で全域の特色を明らかにするということもあるんです。そのときに、ある一部の地域だけが分かるんじやなくて、東京都はこういう地域、こういう地域からも構成されているという、一緒くたにとらえることはできないんだよということが、分かるような学習をどうやっていくのかということは大切なことだと思います。

 いずれにしても、そういうことを意識しながら学ばぜたい。その学ばせ方を、今まではたぶん、こういう学習を意識的に学習活動として位置づけないで、どんどん調べ学習をやって、終わればあとは発表会をやる形になるから、だから調べるという活動だけでやってしまっている。学び方というか、都道府県の地域をとらえるための視点と方法というふうに、実は指導要領にも解説書にも書いているんですけれども、地域的特色をとらえる視点や方法が、意識的に学習ざれていない部分が非常にあるんです。ですからそこのところを、ぜひ意識化したいと思っているわけです。東京都の特色を子どもたちが調べて、分かって発表会をする。発表した結果、東京都の特色が明らかにできたのは、こんな視点からこんな方法でこんなふうに調べたからだよね。だからこの解き方は、他の都道府県でも使えるんじやないかというふうに、最後はまとめていきたいわけです。その学ぴ方を学ぶビデオ教材を何とか作りたいということがあって、去年もお見せしましたが、そのシリーズの中に、都道府県をとらえる視点と方法についてのビデオ教材を作ってありますので、お見せしたいと思います。

(約15分間ピデオ教材を視聴) 

3 静態地誌的視点と動態地誌的視点

 地域的特色をとらえる視点と方法を学ぶというときに、動態的地誌と静態的地誌という、二つの方法があるということが分かったわけです。そのとき全域と基域というとらえ方をしていくと、こんなふうに整理して、こんなふうに見ていくといいのかということが分かってくる。そうやって考えてくると、資料を配ってすぐ個々に調べ学習に入っていくのではなくて、どうやって調べ学習をやらせるかという、学ぴ方自体の学習を一斉学習でやるということも、あり得るんです。都道府県の特色を明らかにするためには、どんな視点から見るといいのかというと、静態的地誌なら自然とか産業とかというアプローチのしかたがある。先生方は今までの指導の中で当たり前のように、自然といえば、こんなふうに調べるんだという窓方式でずっとやってきましたから、分かっているように感じるかもしれませんけれども、子どもたちが自然という面から東京都の特色をとらえるには、どうしたらいいのか。東京都の自然の特色をとらえるときに、地形なり気候という言葉が、子どもたちからすぐ出てくるかという間題があります。しかもその次に、東京都の特色を地形という面からとらえるには、どうしたらいいのか。何をどうやって調べれば地形という特色が分かってくるのか。あるいは気候の特色というけれども、気候って何を調べればいいのか。すぐ気温と降水量のグラフを、先生方は持ち出しますけれども、果たしてそれでいいのか。気温と降水量というのは非常に大きな要素になっているけれども、長野県ならば、なぜ果樹の栽培がさかんなのかというときに、産地の人に聞けば必ず出てくるのは、昼間と夜の気温の較差が大きいという、そういう日較差が大きいとか、あるいは内陸にあるため日射量が他の地域に比べて多いとかいうことが、味とか香りに結構影響するんだといっています。あるいは収穫期に風が強いというのが果樹の栽培に大敵なんですが、そんなに強烈な風が吹く可能性が他の地域に比べて少ない。逆にいくら暖かくたっても、高知県のようなところでは、なかなか果樹の栽培が普及しないのは、そういう条件でもあるわけです。今まで気温と降水量ばかりやってきたけれども、長野県を理解するときは、そうじやない指標もあった方がいいかもしれない。

 自然の特色と簡単に言っているけれど、自然の特色で分かることだって、子どもたちと一緒に考えていくと、そう簡単なことじやないと思うんです。そうすると、さっきのビデオなどで整理しながら、みんなが作った課題をもとにしながら、今日は自然の特色について考える時間にしようとか、次の時間は産業について考える時間にしようとか、産業についての課題をもとにしながら考えるにしても、どうやったら県の特色が明らかになるというのは、l時間1時間、各視点をていねいにあつかっていっても、いいんではないか。そうでないと、学ぴ方って意外に身につかないんじやないか。ただ調べる課題をぼっと作って、さあこれを調べなさいと言って発表させて終わりでは、都道府県はどうやって調べればいいのかという調べ方は、いつまでたっても身につかない。何となく、学ぴ方を学ばせるというのは体験させればいい、みたいな学習になっている。その学ぴ方はどういうものかについて学習されないままに体験させている部分がある。そのことが、いつになっても練習問題に取り組めない、ということにつながる。ある地域を事例としてあつかうということと、その事例を学習したあとに他の都道府県の特色を明らかにするという形では、なかなか練習間題に取り組めない。また、疑間を見いだして何か追求すればいいという、それだけの学習になってしまう。それではいつになっても都道府県の地域的特色をとらえる視点や方法が学べないのではないか。ですからもう少し、そこを意識していく必要があるんだということです。

 各視点をしっかり学んで、埼王県の特色を多面的に明らかにしていけば、埼玉県が日本の中で内陸県としてこんなに工業がさかんで、ベストテンに入ってくる工業県は大部分臨海県という中で、埼玉県や群馬県が結構上位にあがってくる。それはいったいなぜなのかな、というふうにやっていくと、たぶん位置の関係とか、いろいろなものが関連づけられて出てくる。ですから、そういう中で動態地誌的なアプローチで、因果関係から総合的に見ることができるような学習ができるようになってくる。全体的にいえば、県の特色が見えにくいところは、基本的には静態地誌でいった方がいい。愛媛県はミカンの栽培がさかんとかという、特色がはっきりしている県は動態地誌でいっても大丈夫だと思いますが、そうでないと静態地誌の方が基本になる感じがします。いずれにしても、そういうアプローチのしかた、各視点の扱い方をちやんと指導した方が、結果的に学ぴ方の学習がしっかり身につく。そういう意味で、課題をただ作らせてやるんじやない、放任的ではない、ていねいな指導をしていく必要があると思います。そのことが行われれば、テストで確かめたい学習成果の内容も、おそらくはっきりしてきます。

4.学び方を問うテスト間題

 何を子どもたちに身につけさせたいのか、身につけてほしいのか、この部分があいまいであるが故に、ただ調べ学習をしているから、評価が困っているわけです。昨日、指導目標とか学習目標の話をしましたけれども、指導目標がしっかりしていれば、つまりこの事例を通して地域的特色をとらえる視点と方法を学ばせるんだと。具体的にはこの視点は静態地誌でいくとすると、5つの視点をふまえながら、どうやってこれを具体化するか。具体的には地域間の結ぴつきといったって、何をとらえれば結ぴつきが見えてくるのか。具体的にはどういうことを調べることなのかということを、1時間1時間の単位の中で使っていっても、これでもう5つの観点になりますから、これでも5時間かかってしまうんですけれども。そういうことをある程度やっていかないと、身につかないし、やっていくと今度は確かめたくなることが出てくると思います。ちやんと身についたかどうかということを。配布されている問題は、その中で、テスト形式でやるとすれば、どんな間題が作れるかという、そのうちの一例なんです。都道府県の学習が終わったあとに、そういう地域的特色をとらえる視点や方法が身についたかどうか確かめる一環として、問題を作ってみようかなという。これは仮説・仮想の県でもいいんですけれども、現実には実在する県でも、あえて実在する県名を出す必要もないからこういう作り方をしていますが、A県は静岡県です。それをもとにしながら、ともかくまず上の表を読みとろう。どういう疑問をどういうふうに作りだしてくるか、それが地域的特色として結ぴつくのかどうかという、この作業は子どもたちにとっても大切な作業ですから、ちゃんと聞いてみようということです。
 
  あるいは、いろいろな面から県の特色を明らかにするときに、どういう視点が欠けているのか、欠けていないのか。この上のデータだけ見たときに、さあ、あとどういうことを補っていくと県の特色がとらえられるのかということの判断が付くかどうか。実際にそれを調べるときに、どんな資料を用意するといいのか、その方法に当たるものとか、そういうものを学習を通して、子どもたちに身につけさせたいことは何だったのか。基本的には、学習成果がちやんと身についているかということを問うためにはテスト法じやなくてもいいと思います。この場合にはいろんな問題が一緒になっているテスト法を考えているんですけれども、実際にやるときに資料を持っていたら困るような間題は、別に地理の時間で二コマもらうとか、あるいは前半でやってしまって、後半は地図帳も持ち込みにしておいて、一回答案用紙を回収してしまってから、こういう学ぴ方に当たるものは、自分の手元にあるデータをみんな使っていいから、それでこの授業でやらなかった地域を、その特色を明らかにしていきなさいという問題だっていいわけです。覚えているだけで解けるという間題の場合には、データがあると、みんな覚えていなくても教科書に書いてあるからと、答えが出ちやう可能性がありますから、そういう問題は一緒にやらなければいいんです。だから前半でそういう問題を解いて、あとは教科書でも地図帳でもみんな出しなさいといって、授業では長野県をやったから、今日はこれらのデータを使って、岡山県の特色を調べて明らかにしなさいと。視点とか方法を学んだことをふまえて、県の特色を多面的に明らかにしなさいというような問題を作って、それで解かせたらいいわけです。

 いずれにしても、視点と方法を学ばせるということだけに重点を置いたとすれば、どんなふうに評価の問題を作るか。これはテスト形式でなければ、もっと授業中の中でいろいろな活動をさせながら、その様子を見てやったっていいわけです。そういうところを工夫しながらやっていくことを考えていくといいんだろうと思います。

 今日は私のペースでどんどんやってきてしまいましたから、あとで整理しないとなかなかテスト問題とか評価問題まで作れないと思うかもしれません。整理したいことは、学ぴ方を学ぶ学習というのは、ちやんと指導が必要なんだということです。ですから、もっともっとその辺を工夫してやりましょう。単に課題を作って調べればいいという、そういう放任的な調べ学習では、いつになっても学ぴ方は身につかない。もっともっと意識して指導していきましょう。あるいは少なくとも意識化をできるような、そういう構成を考えていきましょうということを、ぜひご検討頂きたいと思います。今日は重々しくなってしまったかもしれませんけれども、子どもたちが、いかに楽しく活動できるようにするかという、悲壮感にたって学んでもだめなんです。ぜひ子どもたちにこんな活動をさせたらうまくいったよという報告を、明るく語り合える、そういう報告をいただきたいと思います。

※視聴したビデオ教材は、内田洋行「中学校地理地域調査シリーズ」全8巻のうち、「都道府県調査の視点と方法」です。






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