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楽しい授業をつくるためのスキルアップ講座

「新しい評価と地理的分野」


1 最近の評価の議論から


 評価について基調提案の中から触れてみます。新聞では学カについて連載までして、みんなで考えていこうとしていますし、そういう意味で、一学期が終わった時のタイミングをみながら、この特集を組んだのだなあと、つくづく思いながら見ています。その中で、「絶対評価の5と4の境がどこにあるのか必ずしも明確でない。担当教師の独断で行われる、偏ったものになる可能性がある」という指摘や、「1や2は付けにくくなり3が多くなる可能性を指摘する声も少なくない」などという、新聞報道等がかなりあって、私はこういう指摘をみると「情けないなあ」と、つくづく思うんですよね。こういうふうに「1や2は付けにくくなるから3が多くなる可能性がある」と、現実に先生方が言ってしまうということは、これって明らかに教育を見失っていますよね。絶対評価になったら、なぜこういうふうになってしまうのか…。

 1や2というのは、どちらかというと私のイメージでは高校の場合の、5段階評定の中で1だけが赤で書かれて、「1が付いたなら単位をあげない」という形になっていますよね。私は基本的にはそれがいい線だと思っています。1と2は基礎が身についていないと言ったときに、より基礎が身についていないというような、基礎が身についていないことに段階差を付ける必要があるかというと、私はないと思っています。高校みたいに1は赤点で単位がもらえない、どの程度赤点なのかという程度差は問題ではなくて、これは水準までいかなかった、というところで考えていきますと、1と2を赤点にするのではなくて1だけを赤点にして、「基礎基本が不徹底なところ」とするのが妥当だと思います。問題は、赤点をつけて基礎基本が身についていないとしたとき、身についていないことは確かに指導力を間われる結果になる。それは先生方にとって1や2を付けたくないという気持ちはよく分かるし、できれば付けない方がいいけれど、でもそれは基準をずらしてやることではないですよね。だからこそ、形成的な評価というか、指導と評価の一体化を計ろうとしているわけですから、できるだけ授業の積み重ねの中でチェックをしていきながら、より効果的な授業をやり、最終的に1や2が付かないようにするということが重要な部分であって、操作をして付けなくするということは、先生の仕事をいったいなんだと思っているのか?ということです。先生は自分の仕事を軽く見ているのか?と、聞きたくなります。

 「基礎・基本を身につけること、それが義務教育の役割ではないか。すべの子どもたちに基礎・基本を身につけさせよう」と言っているのに、それを指標を変えて身につけていることにしてしまおうなんて、自分の仕事を放棄しているのと同じだと思いますね。1や2を付けないで済むように指導と評価を一体化しながら工夫改善していきましょうと言っているのは、基準を変えて1や2を付けなくすることなのでしょうか。そんなことをやったら教師の専門性を問われてしまのは当然だと思います。そんなことをしちやダメです。結果として3が多くなるということがおきるのなら、今言った意味で指導と評価を一体化しながら子どもたちに基礎・基本を身につけた結果、多くなるという状態ならば、喜ばしいことだと思います。

 だけど、そうではなくて1や2が付けにくいから甘くして3が多くなったとしたら、私は基礎・基本が身についていない子どもたちに、身についたような形を付けているのは一番罪だと思います。子どもたちが犠牲になってしまうじやないですか。先生のプライドや操作のために、先生の保身のために子どもたちに基礎・基本が身につけなくていいのかと言うことになる。ぜひそうならないように、だからこそ学習の積み重ねの中で評価をしながら修正をして、子どもに働きかけを変えたりしながら、結果的に1や2が付かなくなるようにして、全ての子どもたちに基礎・基本を身に付けさせていかなくてはならなりません。
 これが新聞の記事になり、先生達の議論に当然のようになっているというのは、困ることだと思います。ましてや、絶対評価になったら学力が下がるという議論がありますよね。「1や2にならないようにするためには、問題を易しくしなければならない。テスト間題でもランキングを付けるテストなら難しい問題も含めて出すけれど、基礎・基本の徹底になって全員に3が付くようにしなくてはならないから、難しい問題を出してはいけない。その結果、難しい間題を出さなくなったから常識で答えるような答えになって、それを学べばいいという形になってくると、結果的に基礎学力が下がる上という議論をしています。それもさっき言ったような理由で、私は教育放棄じやないかと思います。なんで基準の操作でそういうことができてしまうのか。「全ての子どもたちに基礎・基本を身に付けさせたい」という、教師の気高い仕事を、そういう仕事を先生はしているわけですから、そんなかたちで操作してはいけないのです。子どもたちに本当に基礎・基本を身に付けさせるというのは、それが大切だからこういう仕事をやっているのであって、単なる操作で身についたような形にしてしまうのことではないでしょう。
 ただ、結果的に1になってしまう子どもたちがいないわけではありません。逆にどうしてもこの子どもに2はあげられない。そういう子どもたちもいますよね。その中には本当に先生の責任だけではなくて、子ども自体がそういう状況になっている場合、子ども自身が納得できるように、子どもにも親にも説明しなければなりません。“なぜ、あなたは1なのか、あなた自身の学習の態度や、いろいろな積み重ねでどうしてもあなたに対しては1を付け、基礎・基本が身についていないと言わざるを得ない”、としっかり説明できるようにする必要があります。そして堂々と、1が付かないように基礎・基本を身につけたいと思うのなら一緒に勉強できるのかできないか、働きかけてもいいですよね。教師として、プロの人間としての誇りと水準を持っていれば、恣意的に動かすのはまずいということです。

 そして、こういった議論は学習指導要領を何も見ていない議論だと言うことができます。やっぱり迷い出したなら学習指導要領を読んで、自分たちが指導していることは、何を目指しているのかを振り返って確認してください。基本的なよりどころは、学習指導要領が一つの基準として示されているのですから、手許に指導要領を置きながら議論しなくてはいけません。学習指導要領をどこかに置たままやっているから、こんな恣意的な議論になっていってしまうのです。教育は教師の良心みたいなものがあって、絶対やってはいけないことがあります。絶対評価だからこそ、いろいろなことに気が付いているわけですから、その部分を単なる操作で逃れるのは、あまりにも安易で教師の仕事を冒涜することになってしまいます。それを見失わないようにぜひおねがいします。

2 地理的分野と評価

 もう一つの間題はどこの区切りでどういうふうに評価していくかという中で、学ぴ方を学ばせるというときに、単元をどのレベルの単元でとらえるか、ということです。例えば「身近な地域」という単元の場合でいうと、国々を単元で評価して、都道府県も単元として評価するとすると、動態地誌的なアプローチを身につけるということは都道府県で身につけて、国々でも動態地誌的なアプローチで追究していくなら、そういう単元で区切ることが果たして良いのかどうか。やっぱり学び方を学ばせるというのは、都道府県でやって国々でやって、その中で全域や基域という取り上げ方をして、動態地誌をやったならば、(3)で生きてくるはずだなあと思うわけです。(3)で、日本を世界の規模で見ながらやる中で、より習熟の程度が増していって、より確かに身についていき、基礎学力として使えるようになっていくのだろうと思います。

 そう考えると学習内容の中には継続性と発展性があって、単元が区切りになるのは、内容的な部分の中で都道府県の学習は都道府県で終わるけれど、その中で学ぶ4つの観点の中で「知識,理解的」なことは比較的単元ごとに区切れるかもしれないけれど、あとの3つの観点である「関心・意欲・態度」とか、「技能・表現」といったものは、次の単元をどんどん越えて繋がっているのではないか。むしろ繋げていくようにしながら育てていかないと身につかないのではないかと思います。そう考えると区切りが単元でできるものと、単元で区切りながらも次の単元に継続していくというように、次にバトンタッチができるようにしていかないと、うまく身についていかないし、育っていかない、そういう能力も結構あります。それを踏まえながら、どういうように能力や学力をとらえていくかを工夫していかないとまずいんだろうと思います。

 それで、これから一学期で当面クリアーできたという感覚があるかもしれませんが、学年末どうするかというのが大きな課題です。一学期と二学期と三学期を足して、それを学年末とするのか。学期ごとに出すためには、単元ごとが必要かもしれないけれど、それ式でいくと、単元レベルの評価規準で常に単元レベルの評価を足し算することで学年末の評価もしてしまう。だけど、我々が今考えている学習指導要領レベルで言うなら、そうではありません。「この目標を実現するために、こういう学習を積み重ねていく」、地理的分野の目標を達成するためにはどうしたらいいかというときに、(1)や(2)や(3)の学習を通して実現していこうと考えるわけです。だけど評価はそうではなくて、学年末の時、一年を通して考えてみたら、この目標が実現できたかどうか、地理的分野の目標はどの程度実現できたか、地理的分野が期待する学力がどの程度身についたか、というときには、分野の目標に立脚しているべきではないかと思うわけです。そうでなければ何のために目指したのか分からなくなるではないですか。それが、単元ごとを考えると、その中の目標だけで実現したものを足し算していって、はたしてうまくいくのでしょうか。一学期の目標があって、学年末の目標とそのためにこういった単元が配置されているという時、その中で継続的にゴールとしては分野の目標に立脚しながら評価規準を作っているわけで、分野の目標の状況から考えた学力をとらえるのでなければ何のために目標があるのでしょう。

 ただ、足し算すれば学年末の評価になるというのばおかしいではないかと思うのです。それでは細分化された目標のところだけを評価して、分野に照らし合わせる評価はどこにあるのでしょう。その辺をもう一度整理し直していただきたいですね。本来教科の目標があって、分野の目標があって、各大項目の目標があって、中項目の内容が配置されているわけですから、その学習を積み重ねていって最後に実現されているのは、分野目標であり教科目標なんですよね。それに照らし合わせるような分野なら分野を振り返らなくては、いったいなぜ評価がうまくできるのか。単元でも評価することば間違いではないと思いますが、単元も一つの過渡期であり、次の学習に結ぴついていくためのものだとしっかり見据えながら、形成的評価の形でいえば、分野全体のゴールが最後だとする、そこを見失わないようにしながら、学年末を目指してもう一度、絶対評価の評価の見方を検討していくことが必要なことだと思います。

3 高校入試と絶対評価

 また、内申という間題が中学の場合、非常に重要な間題にこれからなっていくわけですけれど、絶対評価は基本的に基礎・基本が身に付いたか身につかなかったかということですから「基礎・基本が身についたから高校の受験の資格がありますよ」、あるいは「高校にいって高校の勉強に対応できますよ」というものですから、どちらかというと、資格試験向きなんです。運転の免許証のようなもので、通転をしていいですよと言うのと同じです。

 そういう、資格を与えるような部分があって、できるだけ全員に資格を与えようと、基礎・基本を身につけさせると言っているわけですから、「高校の勉強に耐えられる」という要素が強いんです。その中でも十分に身につけているとか等、多少の違いはあるのですけれど、基本はそういう考え方です。選抜の試験というのはそうじやないですよね。入試はランキングをつけることが基本ですから、個人差をはっきりさせることが目標です。しかし、そのランキングを付けるのに絶対評価の成果は結ぴつかないのです。できれば全員に同じだけの能力を付けさせるという資格試験向きの評価ですから、ランキングするために利用するというのは無理があるのです。内申を考慮する仕方を考える必要があるでしょう。選抜はランキングですから、絶対評価で基礎・基本を見につけさせるという関係とは、イコールになりません。内申で、ランキングを付けるように絶対評価を付けることは基本的にあまり考えない方がいい。5,4,3,2,1はランキングではありません。「ここまで基礎・基本が徹底してますよ」ということですから、高校教育に充分耐えられるかどうかの部分が表現されているのであって、この生徒は優秀であるか優秀でないかというものではありません。身についているかどうかを内申で見て、あとのランキングは別の方法を考えていくのが基本だと思います。うまく併用する何かを考えなくてはならないでしょう。それを踏まえながら入試の資料としてどう扱って欲しいか、みんなでどうやっていくと、より子どもたちの学習が適切に行われるようになるか、選抜という状況にどういう資料が提示できて、どういうものが提示できないから、そこのところは本番でなにかいろいろな方法を併用しながらやっていく、というように考えて欲しいと思います。基本をふまえながら検討していくのが重要なのだと思います。

 そういう意味で絶対評価の評価をもう少しみんなで冷静に考えながら対応していくことが必要です。夏休みの各学校の課題にして、2学期、3学期におそらく「総合的な学習の時間と絶対評価について」など、それらをテーマにしながら議論をすると、学校へ行くいき甲斐にもなるかなあと思います。スキルアップの講座にならなくて、とうとう最後は私の演説になってしまって、大変申し訳ないですけれど、ここまでにしたいと思います。どうもありがとうございました。






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